晋助さんと暮らして早三年。別にいやらしい関係で暮らしているわけではないけど。
なんというか・・・。飲んだくれのお父さんの世話係?
居て楽しいし、落ち着く。出て行く理由なんてこれっぽっちもないし。それに――――――。

晋助さんが起きる前に、早く朝食を作らなければ。前もそんなこんなで怒られちゃったし。
そういうところで、晋助さん頑固者なのよね。
寝床のふすまが大きい音を立てて開いた。

「あ。晋助さん、おはようございます。相変わらず眠そうですね。」
「一言余計だテメェは。」
「まぁまぁ。そう、怒らないでくさい。お酒は冷蔵庫にありますから。」

不機嫌そうな晋助さんがやってきたので、お酒の在り処を一応教えといた。
これで一応、暴れる事はないだろう。(犬のしつけみたい。)
不機嫌な理由はきっとあの傷だろう。
昨日の夜の事だ。仲間を連れ天人の家に向かい、攻撃を仕掛けた。
見事、天人は倒せたが、十人ぐらい一気に戦ったので、
平気そうな顔をしてたけど体はズタズタだった。
いくら鬼、とか不死身とか言われたって、かなりの深手で痛みはまだ残っていた。
朝食の支度が終わり、新しい包帯を持ってきた。
すこし湿っていた包帯を外すと、生々しい傷が残っていた。
ただ静かに傷を見た。・・・あの天人め。

「晋助さん、私さっき若菜を取ったんですよ。あ、ちょっと古い菜かも。」
「だからなんだ。」
「みにくーい菜でね、晋助さんを傷つけたなんて許せないから狩っときました。」
「―――――その辺ふらついてたのか?」
「えぇ、まぁ。朝、見かけたんで。」

私の言葉に感づいたのか、少し晋助さんは笑っていた。
ちょうど、若菜を採るために鎌もっといてよかったと心から思った。
昨日晋助さんを傷つけたヤツがのうのうと生きてるなんて!
相手的にも晋助さんを倒したかったらしいから、探さずに済んだからいいけどね。(アッハッハ。)
というか!あの天人の手下の天人気持ち悪すぎ!
肌の色、緑色のゲロの色してるくせに私の美しい晋助さん傷つけんじゃないよ。
思い出せば出すほど腹が立ってきて、包帯への力を抑えるのに苦労した。

背中の傷を見たとき、昔の自分を思い出した。
小さい頃、怪我をするといつも包帯を巻いてくれて私を守ってくれた。
――――晋助さん。今度は私が守るよ。
そんなんことを言うと笑われちゃうから本当に言わないけど、
いつか言えたらいいなぁ。

。」
「なんですか?」
「テメェ俺の事好いてるだろ。」

え?
あ?
はぁぁ!!
なんでいきなり!!訳がわからないよ晋助さぁん!!
顔が熱く、これじゃぁ自分からハイ、そうですって言ってるようなもんだよ。
でも、
――――――なんでバレた!?
ただ小さく、目を見れば分かるといった。(そんなに分かりやすいんですか、私。)

。」
「は、はい。」

もう一度名前を呼んでくれた。
ふと気が抜けたのか、目の前には晋助さんの着物で、私の額に柔らかいものが当たった。く、唇!?
耳まで真っ赤な私をみて晋助さんは笑った。

「ありがとな。」
「・・・!ハイ!」

私の着物に少しだけ付着した血を見て晋助さんはそう言った。 いつもより優しい晋助さん。ちょっとこっちがくるってしまうけど、
嬉しくって真っ赤な顔のまま、にっこり笑った。
やっぱり、いつか絶対に貴方を守ると堂々と決意表明してやろう。
守られてばっかりだけど、助けられてばっかりだけど、
「晋助さん。雪、降ってるんですよ!見ませんか?」

それでも、あなたのために。



君がため の野に出でて若菜つむ


わが衣手に はふりつつ




061013 窓を開けてハルのユキを見ましょう? 【恋慕に捧げます】