沖田さんは私の事をそれほどよく知らないはずだ。でも私は沖田さんのことをよく知っている。ストーカーみたいな言い方だが、実際ストーカーではない。私は沖田さんの上司にあたる土方さんと仲が良い。それは偶然である。沖田さんと土方さんは仲が良いのか悪いのかよくわからないが近いことには違いなく、土方さんと仲が良いと必然的に沖田さんの存在も確認できる。沖田さんとはつい一ヶ月ほど前に初めて顔を合わせた。土方さんと話している時に偶然彼が現れたのだ。その時私はとりあえず彼に会釈をした。「土方さんも隅に置けねェなァ」笑いもせず沖田さんは、私と土方さんを交互に見ながら言った。馬鹿か、土方さんは言ったが、目が私を見ていた。私は冷静を装って目を伏せ笑顔をつくった。沖田さんとはそれ以来顔を合わせたことはない。最近私は万事屋の方々とお話している、と土方さんに言うと土方さんは露骨に嫌そうな顔をしてそうかとだけ返した。万事屋の神楽さんは沖田さんと犬猿の仲らしい。何だか羨ましくて見るたび聞くたびに目が熱くなった。何でもしてくれるという万事屋は、果たして私のこの気持ちを抑えることができるだろうか。私は沖田さんのことを愛している。土方さんは「あいつドSだぞ」と言っていたけれどそんなところがとても好きである。私は大概下なのだけれど、沖田さんと寝たらと考えるとどうしても押し倒してみたくてゾクゾクする。私は沖田さんのことを愛しているのだ。皆が寝静まる時間帯になると暗闇の中で暖炉の火をおこす。ごうごうと唸る火の中で、私はいつも“私”を見た。万事屋の銀さんは私のことをあまり好いていない様子であった。「あんた火みてぇな女だなァ」ニヤリと笑い、初対面の私にそう言った。ふっと自分で自分を笑う。あの栗色の髪の毛を思い出してみた。そう、私は火のような女だ。しかし昼間は静かな火だ。今日のお昼、パトロールをする土方さんと沖田さんの姿を見たときはあんなにも心が千切れそうだったのに、何故今はこんなにも幸せなのだろう、沖田さんのことを愛しく思うのだろう。私は沖田さんのことを愛しているんだ。 そういえばと一ヶ月前の顔合わせのときのことをまた思い出した。沖田さんは初対面で私の名前を呼んだ。「さん、縁があったらまたお会いしましょうぜ」と。まるで世界が私を祝福しているかのように、私は歓喜に満たされた。嗚呼、沖田さん、私はあなたのことが好きなんですよ。ずうっと。







晝は消えつつ


恋慕さまへ