あの人の、あの人の声が、聞こえるだけで嬉しく思う。
名前を呼ばれると、もっと嬉しく思う。
きっといつかはバレてしまう。 だけど・・・





?」


「な、わっ、トシ?!」


「何そんなビビってんだよ。ほら、プリントやれって。」



トシはあたしの前の席で、後ろを振り向いてプリントを渡す。
あたしが幾ら経ってもプリントを受け取らなかったから 名前を呼んだらしい。



「あ、ぅん、ごめんね。」


「謝ることねェけどな。」



トシはそう言って、目を細めて笑った。
(やばい。その顔は反則だよ。)あたしは心の中でそうぼやいた。






***







、ちょっといいですかィ?」


「総悟?何ー?」



あたしは総悟が羨ましい。
何だかんだと言いつつ、トシとは仲がいい。
でも総悟には相談なんて絶対できないし。
っていうか何の用なんだ、ほんとに。



「いやあ、いいことを教えてあげようかなーと思いましてね。」



そう言って総悟はにやり、と笑った。
こいつの笑顔ははっきり言って恐ろしい。
何か企んでいるということはバレバレである・・・
けど、いったい何を企んでんのよー!



「今、何企んでんだ?って思いやした?」


「ばっ、違うって! (読まれてる・・・?!) それより、いいことって何?」


「知りたいですかィ?」


「自分で言っといて勿体ぶる?!」


「まあ、落ち着きなせェ。」


「はあ・・・、」



そうだ、こいつはそういうヤツだった。
あたしは大きく溜め息を吐いた。



「まあ、これ以上引っ張っても大して面白くないから言ってやりまさァ。」


「はいはい、何ですかー。」


「言わなきゃわかんねェですよ、土方さんは。」


「・・・え?は?何言って・・・。」


「バレバレなんでさァ。は。気付いてないのは土方さん本人のようなもんでさァ。」


「・・・ま、まじで?」


「まじでさァ。」



総悟はにやにやと笑って言う。
ああ、おしまいだ。 3Zのみんなに知られてたなんて。
ああ、だからかなのか。最近神楽ちゃんが頑張れとか言ってウインナーくれるのは。
ああ、どうしよう、どうしよう。



「総、悟。」


「?」


「言うの・・・?」


「言わないことに決めてまさァ。あの土方さんに彼女なんて10年早いですしねェ。
         っていうかもう何かそれムカつくし、先越されるのはなーみたいな感じで。」



わあ、自分勝手☆
ほんと何考えてんだか読めないわ・・・。



「じゃあ、そんなことあたしに言ってどうしろって言うの。」


「さてねェ。・・・恋してんのはですぜィ?」


「なっ、そ、そうだけど・・・。」



[ 恋してる ] そんなこと わかってたけど、
人に言われると、ほんとに恥ずかしいもんなんだ。



「だから頑張ればいいんじゃないですかィ。」


「え、総悟・・・?」


「俺ァ応援しますぜ。」



や、それは嘘だ。
さっき土方さんに彼女なんて10年早いとかムカつくとか言ってたくせに!



「・・・ってコトで これどうですかィ?」



総吾はケータイをぱかっと開いて、それを見せた。



「え、何これ? トシ!?」


「レアもんですぜ。」



なんで総悟が・・・とか色々思うところはあったけど、
トシのレア画像・・・、やばい。すごく欲しい。



「ゆする気?」


「1111円でいいですぜ?」


「高!(っていうかそれ何か意味あんの?1111円とか!)」


「まあ、いらないなら別に・・・。」


「か、買います!買わせてください。」





やっぱりトシの笑った顔と、
こいつ、沖田総悟には敵わない。





「・・・絶対秘密にしてよね。」





あたしは財布を取り出しながら ふう、 と小さく溜め息を吐いてそう言った。







忍ぶれど色に出でにけりわが戀は

物や思ふと 人の問ふまで


Dear,恋慕 .